【FALENOの作品ページ】
男女がお互いの回復に向かう物語
女教師と男子生徒の禁断の性愛の物語とも読めるタイトル。
しかし、この作品は鬱屈を抱えた男女が暴風雨が過ぎ去るまでという限られた時間に心と体を寄せあったことを通じてそれぞれが回復に向かっていく物語だと捉えました。
美しい映像と静かに進むストーリーの中にいるもえちゃんが愛おしくなるような、そんな作品です。
雨について
雨、特に長く降り続く雨に対してはどちらかというとネガティブなイメージを持つ人が多いかもしれません。ジメジメして体感的にも不快だし、行動も制限される。はやく過ぎ去ってほしいもの。
一方で、雨、特に雨の中の室内は人を内省的にさせます。雨音のせいか、外の世界から少し隔絶されたようなそんな気持ちにさえなるときがあります。
もしかすると、雨のネガティブさというのは、そうした自分に向き合わざるを得ないようなそんな環境だからなのかもしれません。
この作品では「雨」がキーワードの一つになっていきます。雨がきっかけをつくり、雨がふたりが交差する時間と空間をつくっていきます。
天使先生について
もえちゃんの役どころは高校教師「天使先生」。バスケ部の副顧問。同僚の先生にも生徒にもそれなりに人気があるようです。
生徒には隠していますが、もとはバスケットの名選手。しかしケガをしてしまい選手生命を絶たれます。その後、念願の教師になり、密かに好きなバスケットにかかわっています。
天使先生には付き合っている男性がいて、天使先生にそろそろ仕事を辞めてもらって家庭に入ってほしいと求められています。
生徒「矢野くん」の鬱屈
男子生徒「矢野くん」はバスケ部の部員。チームのエース格でしたが膝にケガをしてしまい思うようにプレーが出来なくなり、練習に出なくなります。他の部員からは批判されつつも、体育館にひとり残ってボールを触るなどしてバスケから離れようとはしていません。
実は矢野くんは天使先生が隠しているバスケのすごい選手だった過去を知っていて、当時は試合も追っかけて見にいったほどなのです。正真正銘「憧れの存在」だったわけです。
ふたりの共通点
矢野くんの存在を天使先生は気にかけています。もちろん大切な部員というものあるでしょうが、高校という年代で膝をケガするという同じ境遇になって苦しんでいるというのが最大の理由でしょう。上手にプレーし情熱を傾けていたバスケが満足にできなくなることがどれだけつらいことか、良く知っている天使先生にとっては他人事とは思えないでしょう。
雨宿りの表情が素晴らしい
そんなふたりが、雨の日の体育館で出会います。
その少し前、天使さんは彼氏から「もういいんじゃないか」と改めて仕事をやめてほしいと言われます。
雨を避けようと体育館の軒下で雨宿りをする天使先生。そこに体育館でひとり練習していた矢野くんがふと出入り口を開け、ふたりは見つめあいます。
このときに矢野くんを見上げる天使先生の表情がとても素晴らしいです。弱ったような困ったようなでもしっとりと濡れて清楚な中にも色気がある、とても美しい表情です。
天使先生の鬱屈と矢野くんの情熱
「雨降ってきちゃったね」といいながら体を拭く天使先生。
雨の体育館が好きだと語る矢野くん。天使先生は「かわいい」と冗談めかします。
そんな彼に結婚して教師を辞めるかもしれないと天使さんは打ち明けます。そして「先生になりたくて頑張ったんだけどなあ」と悲しそうに付け加えます。
これに対し矢野くんはだったら別れればいい、好きなことできないなら意味がない、と若者らしくいいます。
バスケが好きなことも知っている。先生がすごいバスケ選手だったものも知っている。ずっと見ていて試合も見に行ってた。憧れてた。高校でバスケするか迷っていたけど、先生を見つけた。バスケに命かけて強くしてそれで先生が笑ってくれればそれでいいと思った。
自分が好きだったことややりたかったことを全力で熱く肯定してくれる矢野くん。
心配な生徒のことを話しても「そんなもんだろ」好きな教職も「もう仕事いいんじゃないか」という彼氏の言葉に比べると熱く響いたことでしょう。たとえ若い子供の意見だとしても。
雨の日のジンクス
突然キスをする矢野くん。驚く天使先生に「好きなこと目一杯やればいいじゃん」。
でもという天使先生。「それに俺、ジンクスあるよ」「ジンクス?」「俺、雨の日試合負けたことないんだ」
雨の日だから自分は負けない。だから先生に迫っても成功する。ということなのでしょうか。それとも雨の日だから自分は負けない。だから先生にもこのジンクスを分けてあげる。ということなのでしょうか。つながっているようでつながっていない。でも思いは伝わってくる気がしました。
なぜ拒まなかったのか?
迫られる天使先生はだめといいながら完全には突き離しません。「誰かきちゃう」「矢野くんも濡れちゃう」は拒否の言葉ではありません。
服を脱がそうとする矢野くん。「風邪ひいちゃうから」と言い訳めいたことを言います。「矢野君のほうが震えてる」と天使先生。「緊張してるかも」という矢野くんのことばで天使先生は笑います。絶対に拒む態度ではありません。
天使先生は「いやじゃないけどだめなんだってば」といいます。
そして「やっぱりだめ」とようやく突き放します。
「私先生だよ」という天使先生。「先生だから」という矢野くん。天使先生は結局激しく求める矢野くんを受け入れます。
タイトル通り「拒めない女教師」の天使先生。しかしなぜでしょうか?気になる存在とはいえ好きという感情を矢野くんにもっている描写はありません。性的に奔放な設定でもないし、矢野君に弱みを握られているわけでも暴力や恐怖で強制されているわけでもありません。
あるとすれば「自らの気持ちの隙間」。自分が好きなことやりたいことを諦めさせられようとして悩みと鬱屈を抱える中で、ストレートに自分への気持ちとやりたいことをやってほしいという思いを天使先生はぶつけられました。不安定な寄る辺ない気持ちの中で、その熱く強い気持ちに心を動かされ委ねてみようかと思ったのかもしれません。
年上の女性のかわいらしい受けが光る
身を委ねられた矢野くんは優しく優しく愛でるように隅々を愛撫したりクンニしたりしていきます。丁寧な丁寧な攻めにかわいらしく反応する天使先生がとても初々しくかわいらしいです。
いわば矢野くんが天使先生を癒して労わるようなセックス。天使さんがイクたびにギュっと抱きしめたり、頭や肩をポンポンとしたり。天使先生を大切に愛おしそうに扱います。
フィニッシュ後も「だいじょうぶ?」と心配そうに声をかける矢野くん。「矢野くんすごいやさしいね」と天使先生は微笑みます。
ここもどことなく自分の都合中心にも思える最近の彼氏の言動との対照的な部分。天使先生の「隙間」には響くものがあったかもしれません。
女性教師と男子生徒、という関係を用いながらも、ストレートに思いをぶつける男とそれを受け止める女として描いているのがとても素晴らしい。素直に、初めてセックスする同士としてフラットに描いたのはとても好感しましたし、良いものをみた思いです。
2回目の体育館、2回目の雨
台風の予報が出ているので早めに学校が終わった後の体育館。雨が降り始めるなか、矢野君はひとりでシュートの練習をしています。そこに天使先生。
早く帰ろうと促されますが「先生は大丈夫なの?」「先生は大丈夫」「先生が大丈夫なら俺も大丈夫」「こんな雨の日は膝痛むでしょ」「別に先生に関係ないでしょ」
帰るよといって強引に帰ろうとする天使先生。でもやはり雨がすごすぎて結局体育館へ。
彼氏に助けを求めるも断られる天使先生。「こんなときにきてくれないとかひどいね」と矢野くん。
雨を確かめるように手を伸ばした後に「ねえ。ちょっとだけ遊んでいこうか」と矢野くんに声を掛けます。初めの軒下のシーンと同様、この表情もとても美しいです。
プールのシーンの切ない美しさ
プールにやって来るふたり。「私も雨好きだよ」と天使先生。
プールに飛び込み矢野くんを水の中で笑顔で迎え入れる天使先生。抱き合いながらキスをするふたりがとても美しいです。自分から服を脱ぎ矢野くんを求める天使さん。気持ちが動き始めたのがわかる素敵なシーンだと思います。
雨が好きだといった天使先生。矢野くんをプールに誘ったときから何かが吹っ切れたような顔をしていました。最初の雨の時間で矢野くんの情熱に身を委ねた天使先生。この雨が降っている間に、自分を開放して自分の中から湧き出てくる何かを掴もうとしたのかもしれません。
美しい、そして真摯なセックス
そのままプールサイドでのセックス。最初のセックスが矢野くんのやさしさに身を委ねたセックスだとするならば、2度目のセックスは天使先生のほうがら求めるセックス。腕をしっかりと絡ませ、何度もキスをして、そして赴くままに自ら動いて感じるさまがとてもエロティックです。天使先生が快感で上り詰めようとするのを懸命にアシストするかのような矢野くん。
気持ちいいを連呼する天使先生に「彼氏よりも?」と聞いてしまう矢野くん。「雨が全部流してくれたらいいのにね」とほほ笑んだ天使先生は大人でした。その答えに火が付いたのか、さらに激しく突く矢野くんに翻弄されるような天使先生がたまりません。
2度目の絡みは、最初のかわいらしい受けの絡みから一転した欲望をあらわにしたコントラストと、しっかりと天使先生が乱れる姿にフォーカスが当たったシーンが印象的。体を密着させキスをしながらの絡みが多いのも情熱を感じさせました。
恋人のように
シャワーシーンでの恋人のようないちゃいちゃを経て、教室内で寝るシーン。
「寒いね」「ありがとう」ひとつの毛布にくるまるふたり。雷の音にこわがって天使先生は矢野くんに身を寄せます。ぎゅっと抱きしめる矢野くんに、唇を向ける天使先生。お互いを暖めあうようなキスです。
一夜明け、日が差す教室。目が覚めた天使さんは矢野くんにキスを求めます。
台風いっちゃったね、といったあとに「俺バスケ部戻ろうと思うんだ」という矢野くん。
そして「先生も決めなくっちゃ」といいます。
雨が止んだ窓の外を見てそして振り返る天使先生。再び矢野くんにキスを求め二人は抱き合います。美しい。とても美しい。
何かを確かめ合うように
3度目のセックス。今度は矢野くんが一転して激しく求めます。そしてそれに対して「もっと」と答える天使先生。ペニスを激しくしごきます。
それにこたえるように激しく体の隅々まで舐める矢野くん。その気持ちをぶつけるような一生懸命な姿が素敵です。
指を入れられ感じまくる天使先生。もっと、とおねだりされた矢野くんは添い寝のようにしてキスをしながらさらに指を動かしていきます。喘ぎながら腕を絡ませていく天使先生がとてもかわいらしいです。
そして我慢できない、とフェラへ。見せるフェラ、男を気持ちよくするフェラ、というよりも自分に入れるためのフェラという雰囲気が出ているのがそそります。
「好き?」ときく天使先生。「好き」と矢野くん。「バカ」微笑む天使さんがかわいいです。
「私は我慢しない」
イキそうになったけど天使先生に「ダメ」と言われ「我慢する」と矢野くんは答えます。
それを聞いて「私は我慢しない」といいながらキスする天使先生。
「我慢しなくていいよ」と言われてうなずきながらペニスを導く表情が力を抜いて欲望に身を委ねる表情でよいです。
ここからはふたりで求め合い、確かめ合うセックス。お互いで気持ちいい?と聞き合いながら交わり、何度もキスをかわします。
気持ちいところを探り突く矢野くん。激しくイク天使先生。矢野くんは「もっと気持ちよくなってほしい」という矢野くんに「なまいき!」と返す天使先生がとってもキュート。しかし余裕を見せたところで矢野くんにガチガチに突かれまくるのがとても良いです。
好きって言って
キスしながらの対面座位はもっと深く交わろうとする気持ちが感じられます。そして天使先生は「もっと好きって言って」とささやきます。そのまま「大好き」と言われながら腰を激しく動かしていく天使先生がとても切なくも愛おしく見えました。
バックの体位になり「全部ぶつけて」という天使先生。
たくましい矢野くんに再度激しく突かれていきます。矢野くんのピストンの切れが良く長いので、天使先生の感じ続ける様子がしっかりみます。
屈曲位
そして正常位のスタイルに戻るとぎゅっとしてと天使先生。満足度の高さをうかがわせるようできゅんと来ます。
そしてそのままグリグリと深く動かすと「奥好き」とつぶやきます。「いっぱい奥かき混ぜて」といわれた矢野くん。すかさず屈曲位に移行します。これが今回ベストなくらい気持ちいのか、屈曲位で深く差し込んだ直後から両足が震えるほど感じ始めます。
声が一段と高くなり、もえちゃんがいちばん感じているときに見せる錯乱状態が高まる。そして脚をガクガクとさせながら行きます。このシーンはかなり興奮します。
圧巻の長く深い正常位
このあとも体を常に密着させながらイキまくる天使先生が圧巻です。
一呼吸置いた後こんどは「ゆっくり。私の中を感じて」と矢野くんにいいます。お互いできもちいといいながらゆっくり動きます。そこから最後の正常位へ。
この正常位、ほんとうにノーマルな正常位ですが、天使先生の気持ち良くて乱れる姿に圧倒されます。姿勢をほとんど変えないまま激しく、しかし長くピストンされてイキ、そのまま続けられてまたイキ、を繰り返していくうちにどんどん上り詰めいく感じがすごいです。ここは天使さんの魅力もさることながら、男優さんの身体能力も相まっての素晴らしいシーンだと思います。
無言の別れ
ようやく迎えに来た彼氏。天使先生は見送る矢野くんを見つめますが何も言いません。
そしてそれがふたりの別れになります。
シーンは変わり、姿を見せなくなったというナレーション。そしてカットが変わると彼氏の車の中。助手席にはだれもおらず彼氏は困惑した顔。
そしてさらにシーンが変わって教室へ。男性教師から天使先生が新学期から学校を離れることが告げられます。
天使先生がいなくなった学校。天使先生がいなくなったバスケ部。しかし矢野くんは部員に頭を下げ、もう一度バスケ部の練習に参加することを願い出ます。しぶしぶ、でも拍手で矢野くんを迎える部員。矢野くんは嬉しそうです。
雨の中、居残って練習する矢野くん。出入り口を開けて雨の様子を見ながら「ジンクス、きかなかったな」と独り言をいいます。
シーンは切り替わり、空に手を伸ばす天使先生。「雨、やんじゃったな」とさみしそうにつぶやき、作品は終わります。
矢野くんの選択
天使先生がいたから高校でも続けようと思ったバスケ。先生が去った後は続ける意味が失われたのかもしれません。しかし、矢野くんは頭を下げてバスケを続けることを決めました。
それは、天使先生に戻ると決めたと告げたことを守るためかもしれません。そして天使先生が好きなバスケを続けていれば、いずれまた交わることがあるかもしれないという期待のようなものなのかもしれません。
いずれにせよ、矢野くんはまっすぐな思いをぶつけることを天使先生が許し正面から受け止めてくれたことによって、鬱屈でどこにも行けずにとどまっている状態から自ら歩み寄り動いていく道を選ぶことができたのでした。
天使先生の選択
天使先生は、その矢野くんのまっすぐな思いを受け止め、「我慢しない」と一旦自らを自由に開放することで自分がこれからどうしたいのかについて見つめることができたのかもしれません。
矢野くんから「先生も決めなくちゃ」と言われて、何を決めたのか。学校を離れることになったとは知らされますが、教師そのものを辞めたかどうかはわかりません。迎えに来ていた彼氏の車の助手席にはだれもいませんでした。したし別れたのかどうかはわかりません。
彼氏とは別れ、別の場所で教師を続けることを決めたのかもしれない。教師はやめたけれども彼氏に依存するような関係はやめたのかもしれない。それとも彼氏とも別れ教師も辞め、全く別の選択をしたのかもしれない。
しかし、大事なのは結果はどうあれ人生の選択の迷いで生じた鬱屈から脱して何かを自分でひ決めて歩き出したということだと思います。
雨のち晴れ、あるいは自分の意思。そして回復へ
天使先生と矢野くんの交わりは雨が降り続いたほんのわずかなあいだのことでした。雨が降り続いているときだけにかかった魔法のようで、ふたりにとってとても大切な時間と記憶になったに違いありません。
初めに述べたように降り続く雨によって作り出された外界と切り離された空間でまっすぐな気持ちをぶつけあいながら、同時にお互いが自分に向き合ったのだと想像します。
だからこそ天使先生は「雨、やんじゃったな」と惜しみました。矢野くんは「ジンクス、きかなかったな」と惜しみました。
しかし、振り返ってみると、雨の中一夜を過ごした翌朝、雨はやんでいました。
にもかかわらず、ふたりは愛し合うかのように激しく交わりました。それぞれの意思で。
きっかけは雨だったかもしれません。しかし、ふたりが心と体を寄せ合ううちに、自らの気持ちと意思に正直になることでみずからを回復したからこそ、雨のジンクスがきかないはずの晴れた朝のふたりの交わりだったのだと思います。
ふたりは、お互いの身体を激しく求め合いましたが、お互いに執着したり関係を続けようというそぶりは一切ありませんでした。それはきっと、ふたりが本当に求めていたことがセックスではなかったからでしょう。
人生に訪れる迷いと鬱屈にとどまった二人が交差することで、自分の人生の歩みを再び進めることになる回復の物語。
AVというフォーマットを特性としてしっかり活かし、エロスと物語をイーブンに成立させる努力をしたことで、双方が引き立ちより魅力的な作品になったと思います。
個人的にはもっとドラマパートの作りやセリフまわし、行間の雰囲気作りに比重が置かれても良かったくらいです。
男優さんの静かでまっすぐな感じと鍛えられた体の佇まいも作品にとても合っていました。
何よりもえちゃんがしっとりと美しい。ふとまたこの雰囲気に浸りたくなるような余韻が残るとても素敵な作品です。
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